ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

忘れっぽくなった父の運転免許更新

Q 「74歳の父ですが、最近、忘れっぽくなっています。もうすぐ誕生日で、自動車免許について、本人は更新して乗り続けたいと言っていますが、どうしたらよいでしょうか。」 (山口・O)


A 高齢者運転による自動車事故が、増加しています。特に、認知症初期で、本人はもちろん、ご家族もさほど気にしていない時期に、交通事故をおこして、加害者になってしまう事件が、報道されますね。又、認知症で治療中なのに、家族の目を盗んで、自動車を運転してしまい、事故になった例もあります。

 警察庁データーでは、認知機能が低下している場合は、不適切運転が2〜3割増となり、認知症の疑いがある人の場合は、その割合が4〜13割増と、急激に上がってしまいます。一方、認知症が全くない高齢者でも、加齢での神経・運動反射低下から、運転ミスやトラブルが起こりえるのです。運転ミスが怖いのは、言うまでもなく、ドライバーの性格や運転マナーが穏やかでも、ミスした途端に、自動車が“殺人凶器”に豹変し,残酷な事件が起きることです。

 法律上では、すでに平成14年から、認知症の診断が出ると、免許取り消し・停止の対象となっていました。しかし、認知症の早期診断が難かしいこともあり、有効ではありませんでした。そこで、平成21年から、75歳以上の高齢者には、免許更新希望時に、認知機能検査(講習予備検査)が義務づけられました。それで、「記憶力・判断力低下」と判定されると、専門医による「臨時適性検査」を受けねばなりません。そこで「認知症」と診断されると、公安委員会が取り消し・停止の処分を決めることになります。

 ご質問者のお父様の場合、「忘れっぽい」ですので、まず早期認知症の有無をお確かめ下さい。認知症の診断がつけば免許取り消しの対象です。認知症が疑われない場合も、上の認知機能検査が義務付けられていますので、そこで該当するかもしれません。一方、認知症がなく、免許が更新できても、75歳以上になれば、老化現象での交通事故が心配されますので、免許返上を勧められたがよいかと思います。