ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

高次脳機能障害について

Q 「友人がバイク運転中に事故にあいました。意識も戻り、リハビリで身体もよくなりましたが、友人の親は『医師から高次脳機能障害と言われた』そうです。外見からは何も分かりません。どんな病気ですか。」 (長野・T)


A 高次脳機能障害とは、あまり聞きなれない病気かと思います。外見からは解りにくく、本人の自覚症状も薄いので、“見えにくい障害”と言われています。最近の研究では、脳震とうレベルの軽い外傷でも、高次脳機能障害がありうるとのことで、注意が必要です。

 高次脳機能障害は、ご友人のような交通事故の他に、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、脳炎、低酸素脳症などを原因とする脳の損傷により、以前とは違った知能・性格・行動となってしまう障害です。主な症状は、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などで、その結果、日常生活や社会生活が今までどおりには出来なくなってしまいます

・記憶障害とは、以前の経験が思い出せないとか、新しい事を覚えられなくなった状態で、例えば人の名前や作業の手順が覚えられません。

・注意障害とは、集中力や考える力に障害がおきた状態で、気が散りやすい、ミスしてしまうなどです。

遂行機能障害とは、計画し、問題を解決し、行動することができないことで、効率よく仕事ができないなどです。

社会的行動障害は、行動や感情を状況にあわせて、適切にコントロールできない状態で、すぐ怒ったり、笑ったり、欲求が抑えられない、じっとしていられないなどです。

 脳の損傷部位により症状が様々ですので、その症状に応じたリハビリや適切な対応法を取る事が大事です。また場の環境や対応する相手によっても症状の出方が、異なりますので、環境整備や、対応の仕方の工夫が重要です。それが適切であると、機能回復や、問題行動の減少が期待できます。御家族の対応の仕方や、可能ならば復帰へ向けての職場環境の整備など社会的対応が重要です。