ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

脳梗塞で意識不明の父に、延命のための胃ろうをすすめられました

Q 「父が脳梗塞で倒れ、意識不明です。医師から延命のためにと、胃ろう手術をすすめられています。90歳過ぎであり、妻への介護負担をかけないかなど、決断できずにいます。」(岐阜・G)


A  胃ろう手術をすすめられたが、決断できずにいると、お悩みのことと思います。


 まず、病状の判断ですが、意識不明について今後の回復の、見通しはどうなのでしょうか。もし、意識の回復はありうるが、当座嚥下障害があるので、その治療として胃ろうを行いたいとのことであれば、それは待っていただいて、当座の点滴治療で、意識の回復をまち、ご本人に判断してもらえば良いと思います。

 一方、今後の意識回復は不可能であるとすれば、本人は今後も判断できないわけで、ご家族が代わりに判断を迫られることになります。開始された延命治療は、本人の意思が確認されないままに、一定長期に続くことになるわけで、ご家族の躊躇は当然です。

 延命治療として有効な胃ろうは、以前は開腹手術が必要でしたが、内視鏡で造設できるようになってから急増し、入院期間を減らしたい病院側の意向などもあり、ややもすると“安易に造設される傾向”を感じます。最も大事なのは、「ご本人の意思尊重」で家族が判断する事と考えます。

 家族の代行判断としては、リビングウイル(尊厳死宣言書)があれば、その尊重で良いわけですが、まだ少数です。従って、この様な厳密な書類ではなくとも、高齢者とご家族で、延命治療の希望について文章などにしておくことで、代行判断の根拠にできるのではないでしょうか。

 現実には、文書も残っていない事が多いでしょうから、元気なころに、ご本人が関連した意思表示(少しでも長生きしたい、ぴんぴんころり願望とか)をされていないか、あるいはご家族が相談しての推測も含めて判断して、選択せざるを得ないと思います。御自分で判断できなくなった認知症進行期の場合も同様に、ご本人の意思に近い方を選択なされば良いと思います。