ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

便に血が混じりました、痔でしょうか

Q 「排便に血が混じり、ペーパーにも血が付いていました。お風呂で肛門を洗った 際 にしみる感覚がありました。痔でしょうか。仕事はデスクワークです。 」(東京・O)


A  排便時に赤い血(鮮血)が付き、しみる感覚がある場合、一番に考えられるのは確かに痔です。しかし直腸からの出血も似ていますので自己判断は禁物です。日本人の3人に一人が“痔持ち”とか(私も20数年前に罹りました)ですが、痔持ちの人が直腸の病気にならない保証は全くないのです。血便が出るけど「お尻を診てもらうのは」と、痔の薬を使っていた直腸がんの方もいます。排便時の出血は、まずその診断をつけることが重要で、かかりつけ医などに、必ず御相談下さい。

  痔(痔核・内痔核)は、従来、直腸肛門部の静脈うっ血が成因とされてきました。 最近は、肛門管周囲の組織の破壊・萎縮などの結果おきる脱出が原因であるとの「肛門組織の滑脱説」が有力で、この滑脱により痔核ができ、出血してきます。治療・養生をしないと痔核が腫れ、脱出が進行し、重症の場合は常時出て激痛となります。

  治療は、痔治療薬、抗炎症剤、漢方などの内服・坐薬・軟膏を使用します。重要なのは悪化原因対策で、私の経験も含め紹介します。

 @食事の注意=刺激物(辛いものなど)を避け、飲酒をやめること。特にビールは身体を冷やして、血管を拡張しうっ血を悪化させるのでやめましょう。

 A排便コントロール=特に便秘が悪いので、繊維質・水分をふやし、運動もして、必要に応じて薬を使う。漢方の乙字湯は、便秘対策と痔症状緩和の二重に有効です。

 B保温=入浴をふやして、排便のあとはお湯でシャワーし、入浴して下半身・肛門周囲を良く温める。痔核脱出を戻すには入浴中が容易です。冷たい椅子などに座ると悪化します。クッションをひいたり、使い捨てカイロをひいて座ったり工夫しましょう。痔の再発予防に使い捨てカイロは有効です。

 C過労を避ける=同姿勢での仕事を短くし、規則的な生活をしましょう。