ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

ダイエットによる脚気

Q 「娘がダイエットのためと、食事量を減らしてサプリメントを多用しています。「ダイエット」が原因で脚気になる人が増えているという話を最近聞きました。脚気の原因、症状を教えてください。」(三重・S)


A 娘さんが、食事量を減らしサプリメントを多用してのダイエットとのこと、ご心配のことと存じます。不適切なダイエットによる健康障害が、指摘されて久しくなります。ダイエットを過剰に行うと、栄養不足、偏食などで、やせ過ぎ・無月経・貧血・骨そしょう症などが心配され、特にビタミンB1(チアミン)が欠乏すると脚気(かっけ)になるのです。また、スポーツ好きの若者でも、偏食すると脚気になることがあるのです。高カロリーでもビタミンB1が少ない清涼飲料水やインスタント食品の過剰摂取の上に、スポーツでビタミンB1が消費され、欠乏症となり、脚気が引き起こされるのです。

 このビタミンB1は、水溶性ビタミンで、体内での蓄積は少なく、骨格・心筋・肝臓・腎臓、脳に存在しています。精米された白米中心の食習慣だった時代は、脚気は結核と並ぶ二大国民病で、大正末期には、年間2万5千人もの死亡者が出たほどです。その後、食生活の欧米化に伴い激減しましたが、最近の過度のダイエット、偏食、アルコール依存症の増加に伴い、また中心静脈栄養管理の普及にも関連して、ビタミンB1欠乏症・脚気が注目されるようになってきました。

 脚気の症状は、下肢のむくみ(慢性心不全、蛋白の不足)、膝蓋腱反射の源弱・消失、心肥大、知覚障害などですが、進行すると運動麻痺・歩行困難となり、意識障害、さらには心不全が悪化してショック状態や、最悪死亡に至る重症例もでてきます。

 前ぶれの症状としては、全身倦怠感、下肢が重い、四肢先端のしびれ、息切れ、胸部圧迫感、また消化器症状(食欲不振、便通異常、悪心、嘔吐など)が見られる。

 神経障害による下肢しびれが起きることから脚気の名で呼ばれますが、全身に影響が出るもので、隠れた現代病であるとも言えます。バランスの良い食事がいかに大事かを教えてくれる病気です。