ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

「腹部肥満とはどんな状態で、心臓病との関係は」

Q 腹部肥満が心臓病の危険因子であるかことを認識している医師が少ないと 新聞に報道されていました。腹部肥満とはどんな状態をいうのでしょうか。また 心臓病との関係について教えてください。    (北海道・M)

A 肥満とは、体の脂肪が普通より多過ぎる状態で、特に腹腔内に脂肪がつく 腹部肥満は、心臓病など生活習慣病のリスクを高めるため問題になっています。 最近は、メタボリック(代謝異常)症候群という新しい名前だが大変多い病気が、注目されており、その根底に腹部への内臓脂肪の蓄積があると考えられています。
 メタボリック症候群とは、腹部肥満(内臓脂肪の蓄積)の上に、高脂血症、 高血圧、高血糖のうち2項目以上を満たす病気で、一つひとつの症状は薬を飲む ほどではない軽い状態でも、複合的に全身の動脈硬化を進めてしまいます。心筋 梗塞、狭心症といった心臓病での死亡率や脳梗塞の頻度が、2倍以上とか、5倍 以上も高かったと報告されています。この病気の発病と進行には、食事や運動な ど生活習慣が強く関与しています。
 腹部肥満の判定は、おへその高さの腹囲が用いられ、男性で85センチ、女性 で90センチ以上が基準とされていますが、それ以下でもヒップよりウエストの 方が大きい人、おなかがぽっこり出ているのに指でつまんでも厚みがない人は、可能性があり要注意です。
 腹部脂肪を確実に知る方法は、病院でのCTスキャン検査ですが、簡便法とし てウエスト・ヒップ比があります。腹部の最も細いところ(W)、お尻の最も出 ているところ(H)を測り、W(cm)÷H(cm)が男性1.0、女性0.8以 上を腹部肥満と判定されます。腹部肥満の心臓への影響は、心臓動脈(冠状動脈)にコレステロールが蓄積さ れ、血管が狭くなり、心筋への血液が乏しくなることです(心筋虚血)。
 その結果 、狭心症発作がおきたり、さらに進行すると血管が閉塞して心筋の壊死状態がおき、心筋梗塞となってしまいます。急激で無理な運動をしますと、突然の心臓発作が 起きて、突然死につながることすらあります。腹部脂肪は要注意なのです。