ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

「ホルモン補充療法」を続けても大丈夫ですか? 

Q「更年期障害の症状が出て、受診したところ投薬の一つに女性ホ
ルモンが入っていました。以前、女性ホルモンはガンになると聞い
たことがありますが、このまま飲み続けても大丈夫でしょうか」 
 (群馬・T子)

A 女性ホルモンを投与する「ホルモン補充療法」(HRTと略)は、更年期障害の原因が女性ホルモンの急激な減少にある以上、根本療法の一つで、有効なものです。しかし、子宮ガン、乳ガン、血栓症との関係など、副作用が問題になってきているのも事実で、近年、慎重な投与と経過観察が必要であるとする勧告が、厚労省や関連学会などから、次々と出されており、代表的なものをご紹介します。

(1)「日本医師会ホームページ」の解説文では、HRTの効果と注意点について、次のように記されています。@更年期障害ののぼせ、異常発汗、冷え症、肩こり、腰痛、関節痛などに有効である。A高齢化で一層進むコレステロール増加・動脈硬化、心臓病の発病、骨粗鬆症の予防にも有効である。しかしB子宮ガン・乳ガンの人、肝臓障害、糖尿病薬使用者、血栓のできやすい人は、使用不適。
(2)ここ数年次々と公表の、欧米での調査・研究は、HRTの副作用として乳癌・心臓発作・脳卒中の発生数が増加すると警告しています。それらを受けた「日本更年期学会」見解(平成14年)。@更年期障害ケアの基本は、生活習慣の適性化で、それが無効な場合に薬物療法。A薬物療法の一つであるHRTのリスクと効果を慎重に判断。BHRTの治療に際しては、適応の確認を厳重に。治療開始後に、効果判定や乳がんやその他の異常所見のチェック、安全性確認しながら治療の継続・中止を判断する、など。
(3)厚生労働省より医薬品安全性情報(本年1月)で、女性ホルモン長期使用への注意を喚起。@ 慢然とした長期投与を行わないA投与前・投与中における定期的な乳房検診、婦人科検診の必要性B動脈性の血栓性疾患又はその既往歴のある患者に対しての投与禁忌C慎重投与すべき疾患の追加(子宮内膜症、乳腺症、SLEなど)
  これをご参照いただき、主治医の先生と良く相談されながら、ご自身が十分納得した治療を受けられるよう、お勧めいたします。」