ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

「内臓の病気が、腰にくることは?」
                    
Q「腰痛で受診したところ、筋肉だけではなく肥満による内臓の影響もあるのではないかと言われました。痩せるしかないと思っていますが、内臓の病気が腰にくることもあるのでしょうか?」(東京・男性)

A  腰痛の原因に関するご質問ですが、内臓の病気による場合と、肥満の影響の2点について、お答えいたします。
 まず腰痛を来たす内臓疾患について、説明いたします。
@腎尿路系の病気として、腎臓結石・尿管結石(血尿を伴う激痛)、腎盂腎炎(高熱と膀胱炎症状)、腎癌・尿路癌(血尿)などがあります。特に癌は手遅れになると命に関わる結果になりますので、早期発見が重要です。多くは尿検査の異常が、診断の手がかりとなり
ますが、尿に異常が出ない場合もあり、腹部エコー・CTが有用です。
A膵臓疾患も、腰痛が主症状になることがあります。急性膵炎・慢性膵炎・膵癌などで、上腹部痛・下痢・体重減少なども伴います。膵癌は、発見が遅れやすく、多くの癌のなかでも、最も死亡率の高い癌です。血液検査や腹部エコー・CTなどで診断していきます。
B胃 十二指腸の病気でも、腰痛が来ることがあります。胃の後壁(背中側)にできた、潰瘍や癌では、胃部痛とともに、腰痛が伴ないます。内視鏡検査ですぐ診断できますし、早期発見すれば、高率で治癒できる癌です。潰瘍は薬で治癒できます。
C婦人科疾患(月経困難・子宮疾患など)や腹部大動脈瘤などの疾患でも腰痛がありえます。まれですが、後腹膜の疾患(各種の腫瘍性疾患・炎症性疾患)でも腰痛の原因になります。
D各種の内臓癌による腰椎骨転移も、腰痛の原因として、深刻なものになります。
 次に肥満の影響ですが、体の重みが腰に必要以上の負担を強いるため、腰痛の原因になります。内臓についた脂肪が、腹部の重心を前方に移動させるので、腰痛の原因にもなります。加えて、肥満している人の多くは、体重にみあった筋力を伴わない、つまり体重に負けてしまうような弱い筋肉の持ち主が多く、体の重心が前へ前へ傾いてしまいがちになります。そこで、無意識のうちに上半身を後ろに反らせる力が働きます。相撲とりが土俵の上で、胸を反らせるような姿勢です。そのため、体のバランスを崩し、腰痛になりやすい傾向が生まれてくるのです。