ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

2003/2 「痴呆を早期発見する検査は?」

Q.「物忘れが激しくなってきました。痴呆の始まりかと心配しています。痴呆を早期発見する検査があるのでしょうか?   59歳・男性

A.中年を過ぎますと「物忘れ」が気になりますよね。ご質問者のように”忘れっぽくなってきた”と心配される方は、かなり多いのではないでしょうか。「忘れっぽさ」=「記憶力の低下」は、健康な方でも40-50台以降に起きてくる正常の老化現象の一つなのです。人間の記憶力は20才台が最も優れており、その後は誰でも低下していきます。従って物忘れが気になる方も、多くは病気ではなく、医学用語で「良性老年性健忘」「良性老人性もの忘れ」などと言われている状態なのです。この健康者の記憶低下と一部に発病する痴呆症早期段階の記憶障害とは、明確には区別しにくい時があります。
 しかし近年、痴呆の早期発見につながると注目されているのが、健康者と痴呆症の境界にあたる「軽度認知障害(MCI)」という病的状態です。MCIとは、初耳の方も多いでしょうが、そう診断された患者さんは、1年でその12%、4年では約50%がアルツハイマー病に進行したと報告されていますので、痴呆症の前段階とか早期段階と考えられているものです。MCIの診断基準は、
@記憶障害以外の知能は正常
A普通の日常生活能力で、痴呆ではない
B記憶障害だけが年齢以上に強いことなどです。
 従って、早期発見のための検査としては、状態をお聞きする「問診」、及び記憶力や見当識をみる「知的機能検査」(観察式・質問式)が中心です。「長谷川スケール」という、質問式検査が、日本では最も広く行われています。CT・MRIなどの画像診断検査は、痴呆症の原因を診断するためには必須ですが、痴呆を早期発見できる検査ではありません。(研究では試みられています)。血液検査(「アポリポ蛋白E4」という遺伝子の検査)や「点眼試験」(散瞳剤により開く瞳孔の面積を測定比較)、髄液検査(アミロイド蛋白やタウ蛋白の測定)などを行っている病院・施設もありますがまだ研究レベルです。
 痴呆の早期発見には、現段階では、問診と知的機能検査が中心になっているのです。