ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

2001/1 「一過性脳虚血発作について」
Q:一度ですが、手に力が入らなくなり、舌がもつれてしまうことがあります。何の前兆でしょうか ?

A:ご質問の症状だけからでは判断しにくい所もありますが、脳梗塞の前兆である事が心配されます。
 手と言っても左右どちらか半分の脱力(片麻痺)と舌の麻痺(構音障害)とすれば、軽い脳梗塞か、一時的な脳機能障害(一過性脳虚血発作=TIA)が最も考えられます。高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病があればそれが原因になって起こされたとも考えられます。
 軽い脳梗塞の場合は,マヒも軽度で、後遺症が本人には自覚されずに、医師の診察で初めて判る事もあります。受診され,検査(脳CTなど)をお受け下さい。
 TIAは、一時的に血栓(血の塊り)が詰まって脳血管の血流が途絶えたり、血圧が下がり血液の流れが悪くなって虚血状態を起こし、麻痺やしびれが起きるもので、24時間以内に
症状が消えてしまうものと定義されています。症状は、発作後2分位で一番強くなり、5分から15分位は持続することが多く、1分以内で消えてしまう短い場合は、TIAではないようです。血栓が詰まっても、生体の血栓溶解作用で梗塞が解除されるので後遺症なく治ります。しかし問題なのは、TIAは脳梗塞
の前兆といわれており、治療せずに放置すると30%以上に脳梗塞発作が起きることです。(62%もの例に発作がおきるとの報告もあります。)また、TIAを起こした人は、起こしていない
人と比べると15倍も脳梗塞になりやすいとのデーターもあります。
 したがってTIAと診断されれば、脳梗塞を予防するために、血栓予防薬(アスピリンなどの抗血小板薬)で治療する必要があります。また、基礎に慢性疾患があれば、その治療も大事です。
減塩食・低カロリー食などの食事療法、ウオーキングなどの適度な運動、生活習慣の是正が重要です。(軽い脳梗塞でもほぼ同じ治療と養生が必要です。)
 なお、TIAと鑑別する必要のある疾患(てんかん・低血圧による失神・低血糖・ナルコレプシーなど)もありますので、きちんと診察をお受け下さい。