ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明
急性腎盂炎の治療について  1999.6

Q:「急性腎盂炎と診断されました。過労とのことで、安静にしておりましたが、くせにもなると聞きました。腰の痛みが当初あって腰痛かと思っていましたら、発熱し、医師にかかったらこのように言われました。1週間仕事を休んで復帰しましたが、気をつけることなど教えて下さい。今もときたま腰のあたりが痛むことがあります」

A:腰痛と発熱があって診断されたように、腎盂炎は一見カゼ症状ですが、尿の症状も伴なっているので、尿検査を受ければ診断が確定されるものです。
 原因として多いのは、膀胱炎を起こした細菌が尿管を逆行性に上がっていき、腎盂という腎臓の出口にあたる部分に感染をおよぼして発症する場合です。 従って、症状としては膀胱炎と共通点も多く、排尿痛・頻尿・尿混濁が主なもので、3主徴とも言われています。そして膀胱炎には見られない腰痛・発熱(38〜40度の高熱)・悪寒戦慄(寒くてガタガタとふるえる)など、感冒症状に似た症状もあり、カゼと誤診されることがあります。 腰痛も腰部中央ではなく両側または片側で、たたくと痛い(飛び上がるほど痛い時もある)のが特徴の一つです。
 尿検査では、尿沈査(尿を顕微鏡で見る検査)で白血球と細菌が増加していて、診断の見当がつけられます。尿蛋白が出ていることもあります。そして尿培養検査で原因菌を多数検出することで、診断が確定します
が、80%が大腸菌です。
 治療は、尿細菌培養検査で原因菌を確定して、その菌に有効な抗生物質を投与することが一番重要です。しかし、培養検査結果が出るまでは、大腸菌に有効な薬剤で治療を開始しておきます。水分を多く取って、利尿をつける(尿量を増やす)ことも大事です。水分で細菌を洗い流してしまうつもりで、尿量1.5ー2.0リットルを目標に、多めに水分をとりましょう。もし熱や寒気など症状が強いときは、安静と保温が大事で、食欲がなければ点滴も必要です。
 また、重要な留意点として、症状が消えてからも10日から2週間の間、投薬を続ける必要があります。再発と慢性化を予防するためと言われています。
 何度も繰り返す場合は、膀胱尿管逆流現象(腎臓〜尿管〜膀胱と流れ出た尿が、膀胱から尿管に逆流してしまう病的現象)や尿流障害(結石、前立腺肥大などによって尿の通路が塞さがってしまい停滞を起こす)
などが原因となっている場合もあります。泌尿器科で診断してもらう必要がありますし、手術も含めて治療が必要になってきます。
 予防としては、膀胱炎の予防とも共通していて、まず排尿を我慢しないことです。尿が残って溜まっていると、細菌の繁殖につながることがあるからです。そして、水分を十分にとって、尿量を多めにして、尿の停滞を避けることが重要です。下半身を冷やさないこと、さらに清潔に留意することです。以上の注意で、予防に心がけて下さい。