シリーズ私と電子カルテ その1  医師の立場から


 
医師にとっての電子カルテ ---使用して2年半の経験から---      内科医 大場敏明

 1)医師になって29年すぎました。電子カルテ導入しての開業から2年半ですので、それまでの26年間は、紙カルテでの診療ということになります。

  私の勤務した一般病院では、多くの医師のカルテは、
@読みにくいクセ字で、
A少ししか(orほとんど)書いておらず、
B思考過程(診療内容)など解りもしないメモ内容で、
C検査指示もハンコ押しでないと判別を困らせ、
D処方にいたっては医師毎のクセを熟知した名人が必要になったり---
と 不評のカルテがほとんどといって良い状況でした。(大学やがんセンターでも似たような状況でしたが、受け持ち患者が少ないせいもあって、沢山記載してはありましたが--内容は様々でした。)

 丁寧にカルテを書く評判のいい医師は、各病院で若干名はいましたが、彼らは大体診療時間が長く患者を待たせるので、管理部・婦長・事務長などから不評だったり---。

 かく言う私は、生来の悪筆、力を入れないタッチのクネクネ字で、悪評@の最たるものでした。また、SOAP方式が紹介されてからは、それをなるべく書こうと努力して、カルテには S--O---A---など1行くらいは書いていましたが、アリバイ的レベルで、だが”とにかく書こう”で、悪評B。 また、ハンコと読み取り名人の世話になりっぱなしという状況でした。でも午前外来一単位で、40人から50人をなるべく親切に診ることを主眼で、カルテ書きは、「皆さんの協力お願い」ということで20数年、申し訳ないなあと思いつつも、今の医療制度の矛盾だわいと開き直って過ごしてきたわけです。

 

 2)「だいたい悪筆を、治すのは困難なものだ」と悟っていた私は、ワ−プロの出現に歓喜して、とびつきました。もう20年も昔のことです。うすいレコードみたいなFDだった時代に(確か一太郎がでる前だった)、船橋の病院の医局で2番目くらいにワ−プロを使い出したのは、「字がきたなくて文章が読みにくい」との悪評を解消するためでした。事実、ワ−プロで書いた文書は、それは読みやすいと好評でした。しかし、それと対比すればするほど、カルテ記載は悪評のままでした。従って、ワ−プロソフトで使える電子カルテは、悪筆の私にとっては、待望久しいものでした。しかし1990年代になっても、大学病院とか、がんセンターなどで巨額な資金が投じられて開発しているとの話しは聞いており、見学もしたことはありましたが、一般病院組織では、とても無理な別世界の出来事でした。一般病院でも、レセコン(レセプト・コンピューター)は当たり前になってきても、処方箋書きだけとか、退院時のまとめとか、ワ−プロ・パソコンの活用は実に部分的でしかありませんでした。

 それが、ノ−バメディコ社のホームページ(http://www.iijnet.or.jp/prodoc/)によれば、一般パソコンで使える電子カルテソフトが出だしたのは1995年頃だったそうです。しかし私が知ったのは1999年頃で、インタ−ネットは1996年頃から使っていたものの、電子カルテの情報収集は、遅れていたわけです。1999年時点で、実に沢山のHP情報を見つけて、早速オ−プンと同時に「電子カルテ導入」に飛びついたのです。

 

 3)医師の立場で、2年半電子カルテを使用してみての経験からですが、1)で触れた、悪評カルテ5点のうち、@CDはたちまち解決できます。たとえ悪筆・クセ字の医師でも、綺麗なカルテ・指示・処方が可能になります。そして、Aについては、定型文・過去診療歴などの活用で、早くかなりの記述が可能になり、B思考過程(診療内容)もかなり解る内容にできていると、自負しています。そうしないと、カルテの印刷で、患者さんに渡してある「私のカルテ」への貼付は、うすい内容になってしまいますので。「私のカルテ」への患者さんの目を意識して、なるべく丁寧に書こうと努力する訳です。

 さらに、患者経過の参照・処方一覧の参照・患者の医学情報・Do処方・患者の受診日及び血圧値一覧表示・検査結果参照・検査結果・血圧値のグラフ化・紹介状作成・診断書作成などとても便利な機能が盛りだくさんであることも実感しております。

 ただ、昔のように、午前で50−60人もの多数の診察数の場合では、丁寧な内容はかなり困難になる心配があります。手書きカルテと比べて、どちらが早いかと、聞かれるわけですが、同じ内容で読める字でのカルテ記載であれば、電子カルテの方が間違いなく早いですが、「丁寧な内容」のカルテ記載には、一定の時間がかかります。一番の問題は、キ−ボ−ド打ちが慣れていないと時間がかかること、処方なども結構、打ち込むのに時間がかかる場合があることでしょう。そして、時々おきるミスとして(正直に告白します)、”クリックずれによる一項目下の選択”ミスです。とんでもない処方薬が、綺麗な字で入力されて、処方箋に打ち出されることがありうるのです。

 電子カルテの開始にも、かなりの時間がかかりますし、慣れてくるのも、2−3ケ月はかかりますが、それ以上の多くのメリットがありますので、医師の立場で電子カルテを導入して正解だったと思っております。

 ですから、見学に来られた医師の皆さんには、どのソフトであれ、多くのメリットがある電子カルテはお勧めですと、お話ししています。