ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

年齢を重ねた親の運転免許更新

Q 78歳の父は自動車の運転が大好きです。誕生日を迎え免許更新が控えています。まだ大丈夫と父は言いますが、物忘れが増え、車にも小さな傷が目立ちます。やめさせたほうがいいでしょうか。(長崎・S)


A 高齢者の自動車運転、ご家族としては、悩ましい問題ですね。長年、慣れた運転で、しかもお好きだったとなると、75才を過ぎたから運転免許更新を止めなさいとは、言いにくい所ですよね。しかし、ご質問者のお父様のように“もの忘れが増え”、“車にも小さな傷が目立つ”ようですと、結論としては、是非免許更新はおやめになり、できれば免許証の自主返納をお薦めします

 75歳以上の方の運転免許制度については、この度見直され、免許更新の要件が厳しくなります。その背景には、超高齢社会の日本で、高齢者による交通事故が後を絶たない現状があります。全年齢層の交通事故死亡件数は、減少しているのに、75歳以上の場合は年々増えてきています。高速道路での逆走事故の7割が65歳以上の方です。先月の横浜で集団登校の小学生が巻き込まれた死傷事件は、87才高齢者運転の軽トラックによる玉突き事故でした。

 ご家族もお気づきの「もの忘れ」ですが、年齢も考えると認知症の疑いがかなりありそうですね。家族の会の調査では、家族が認知症に気づいた変化は、①同じことを何度も言ったり聞いたりする、②ものの名前が出てこなくなる、③置き忘れやしまい忘れが目立つですが、お父様の場合も似ていませんでしょうか。車にも傷が目立つとは、明らかな運転ミスの頻発ではないでしょうか。認知症かどうか、是非、ご受診なさっては如何でしょう。そして認知症と診断されれば、運転はお止めになるようご説得下さい。

 この説得には家族や周囲のねぎらいが大切だといいます。「運転をやめるというのは大変な決断。これまで運転してくれてありがとうとの言葉をかけましょう」とは、専門家の助言です。「自主返納」制度では、免許証のかわりに本人確認の証明にもなる運転経歴証明書が発行されます。いうならば卒業証書ですね。是非ご相談ください。