A お母様の場合は、手術で治せる認知症の一つである慢性硬膜下血腫の手術を受けられて、経過良好であったが、最近、生活障害が出てきた状態のようですね。慢性硬膜下血腫は、適切な時期に手術で血腫(血の塊り)を取り除けば、完治する場合が多いものですが、後遺症の血管性認知症が出てきた可能性も否定できません。また、他方で、手術との関連は別にして認知症が発症してきた場合も、否定できません。まず、脳外科医などに、病状の確認をお願いいたします。
薬で治せる認知症ですが、甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症などです。また、感染性の場合、そして薬物の副作用によるものなども、適切な投薬や薬の調整で治る認知症だと言えます。甲状腺機能低下症は、不活発、低体温、徐脈などの症状で、認知機能の低下もきたすことがあります。その結果、生活障害などが起きれば、治療が必要です、甲状腺ホルモンの内服治療で症状が改善できます。またビタミン欠乏症(B2、B12等)も少なくありません。ビタミン内服が有効ですが、アルツハイマー合併の場合は、並行治療が必要です。
認知症の多数を占めるアルツハイマー・血管性など脳細胞の委縮性変化による場合は、根治薬はまだ開発されておりません。つまり認知症の症状の中で、認知力の低下(記憶力・判断力・見当識・計算力など)は、薬で治せないのです。しかし、その症状を緩和したり、悪化を抑制することは、進行抑制薬でできます。特に、認知症ケアを適宜組み合わせることで、その効果を高めることができるものです。
一方、薬でなおせる症状は、認知症に伴うBPSDです。BPSDとは、認知力の低下の結果、行動と心理状態に異常をきたす症状(幻覚・妄想・不穏・うつ状態など)で、向精神薬や抗不安薬などの投薬治療で改善し、治すことができます。病気や病状に合わせて、適切な治療が必要ですね。
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