ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

誤嚥性肺炎について

Q 「80を超えた父がこのところ、食事中に咳き込むことが増えて時間もかかるようになりました。喉も「違和感がある」とこぼすなど元気がありません。誤嚥性肺炎が心配です。食事後はすぐに横になります。いい方法はないでしょうか(山梨・K)」


A お父上のご様子は、確かに心配ですね。食事中の咳き込み(むせ込み)は、「喉の違和感」ともども、老化などによる「嚥下障害」と思われます。これは、飲食物をのみ込む嚥下動作が正しく働かない現象ですが、その結果、食物などが誤って気道(空気の通り道)に入ってしまう「誤嚥」につながります。また食事に時間がかかることも嚥下障害のためと思われますので、誤嚥が心配となりますね。

 誤嚥性肺炎は、口の中の細菌が、のみ込んだ食物などとともに、気道内そして肺に流れ込んでしまう誤嚥により発症するものです。高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係しており、肺炎で死亡する人の94%が75歳以上です。また90歳以上では死亡原因の2位となるほど、高齢者特有の病気ともいえるものです。

 誤嚥性肺炎の症状ですが、一般に肺炎と言えば発熱・せき・痰などですが、注意が必要なのは、この症状が出ない場合すらある事です。例えば、なんとなく元気がない、老化が進んだり認知症も疑われたが、実は肺炎だったりするのです。食事中のむせや痰絡みなども疑わしい症状です。父上様のご様子も、この誤嚥性肺炎の特徴と重なる所もありますね。現時点でも是非早めに、かかりつけの先生にご相談なさった方が良いかと存じます。

 予防ですが、口腔ケア、食事の座位の工夫、食事の工夫(とろみ食など)、嚥下訓練、肺炎球菌ワクチンの接種などが必要です。口腔ケアは、口腔内の細菌量を減少させ、肺炎発症頻度を減らすことができます。食事時の座位姿勢ですが、反り返る姿勢は誤嚥しやすいので前かがみ気味の方が良いと言われています。食後にすぐ横になるのは、逆流しやすいので、好ましくありません。食後30分くらい、できれば1〜2時間の座位・半座位でお過ごしください。

 でも早めに、病医院に受診なさって下さい。