ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

長引いている咳

Q 「今年8月ごろから、朝方の咳(痰なし)に悩まされています。有料アプリで計測したところ、午前4時ごろに少ない時で3〜4回、多い時で10回以上、咳(ゼーゼーない)が出ていました。6月に受診した健康診断で「異常なし」と診断されましたが・・。薬は特に飲んでいません。(東京・T 30歳女性)」


A もう3ケ月近くも長引いている咳ですね。どういう病気なのか、ご心配のことと存じます。

 "長引く咳"については、日本呼吸器学会の「咳嗽に関するガイドライン」に詳しく説明されており、それらを参考に解説します。まず、長引いている咳(8週間以上続くもの)は慢性咳嗽と分類され、3週間未満の急性咳嗽と区別されます。急性のものは、多くが感染性や感染後の咳ですが、慢性のものは、非感染性の咳が主です。そして慢性の半数が咳喘息で、副鼻腔気管支症候群、アトピー咳嗽なども考えられます。

 急性であれ、慢性であれ、咳が続いていれば(普通の風邪は2から3週間ぐらいで改善)、原因の病気が問題になります。心配なのは、重い病気(例えば肺結核や肺がん、肺炎、肺塞栓症など)が隠れている場合です。質問者の年齢からは、考えにくいとは言えますが、完全に否定しきれません。まずはこのような重い病気の有無を、胸部X 線検査により確認する必要があります。先ずかかりつけ医か呼吸器医に受診なさって下さい。

 もしX線検査の結果、異常がない場合には、咳が出る時などに、ゼーゼー(喘鳴)があるかないかで、疑われる病気が違ってきます。喘鳴がある場合に、最も疑われるのは、喘息です。また中高年以上の方ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が原因の場合もあります。一方、喘鳴がない場合、一番疑われるのが、咳喘息です。成人の8週間以上長引く咳の原因として、半数が咳喘息と考えられるほど多いものです。また、痰のからみの有無も、診断に有用で、痰のない乾いた咳は、咳喘息、アトピー咳嗽、百日咳、胃食道逆流症(GERD)、心因性咳などが原因と考えられるものです。痰がらみがある慢性の咳のは、副鼻腔気管支症候群・COPDなどです。以上から、質問者の病状は、咳喘息の可能性が一番強いかと思われます。早めにご受診ください。