ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

刺身など海鮮物にいる寄生虫

Q 「海鮮物が美味しい時期になりました。刺身など、生ものが好みですが、サーモンやサンマなどにいる寄生虫が心配です。調理には気をつけていますが、かかった時の対処法などご教授下さい。(宮城・O)」


A 身など海鮮物にいる寄生虫のご質問ですが、日常診療で問題になるのは、アニサキスです。

 アニサキスとは クジラ等の海産ほ乳類の消化管に住む寄生虫ですが、哺乳類の糞便と共に放出されたアニサキスの卵を、魚介類が捕食して感染します。よく感染するのが、サケ・サバ・サンマ、カツオ、イナダ、イワシ、アジ・イカ・タラなどで、その内臓表面や筋肉中に幼い寄生虫(体長2〜3cm)として住みつくものです。イカなどをさばいているときに目で見えたりしますが、白い糸くずのようで、よく注意しないと見つけられません。

 この幼虫がいる海鮮食を、生のままで食べることによりヒトに感染します。アニサキスは、胃壁 や腸壁に侵入して、数時間後に激しい胃痛・腹痛、悪心、おう吐、ときに吐血までおきてきます。下痢症状がないという点で他の食中毒とは異なります。下痢はないけど気持ち悪くて、とにかくお腹が痛い、これがアニサキス症の特徴です。また、アニサキスは、アレルギーをもたらすこともあり、その場合はかゆみや蕁麻疹(じんましん)といった症状が出ます。治療法は内視鏡による摘出以外にありません。緊急内視鏡をして、アニサキスを見つけ、スネアで摘除すると、けろりと治ってしまうので、消化器内視鏡医の腕のみせどころです。

 予防法は、海産魚介類の生食によく注意することです。十分 な冷凍(−20℃、24時間以上)や加熱調理で虫体 は死亡します。新鮮な魚類の場合は虫体の多くは内臓 表面に寄生しており、筋肉内に寄生している場合は 少ないので、内臓を除去し十分に洗浄することでも感染の確率を下げることができます。イカ類の場合は外とう膜皮下に虫 体が目視できることが多いので、虫体がみられる個 体の生食は避けることです。また、しめ鯖は、よくアニサキスがいますので、酢でしめてもアニサキスは死なないことをご承知ください。