ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

ピロリ菌の除去について

Q 「胃が痛くて悩んでいます。毎年の健康診断で胃のレントゲンも撮っており、以前胃カメラも受けました。胃炎と言われました。ピロリ菌が原因でしょうか、除菌した方が良いでしょうか。(50代・男性)」


A 胃痛で悩まれているとのことが、先ず重要なのはその原因疾患を確かめることです。働き盛りの男性で胃が痛くなる病気は、確かに胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが多いかと思います。しかし、胃が痛いと感じられても、実は胃以外の病気だったりすることもあるのです。痛む場所によっては、疑われる病気がさらに胆嚢・膵・大腸疾患などにも広がっていきます。また50代は癌の好発年齢ですので、その注意も必要で、症状だけでは区別がつきません。たとえ今までの検査で、胃炎とか潰瘍とかの診断があっても、胃癌、胆嚢癌、膵臓癌などの発病を、否定しきれるものではありません。必ず、病医院で診断をお受け下さい。

 さて、胃痛とピロリ菌の関係ですが、ピロリ菌は胃痛の直接原因ではありません。そもそも50歳以上の日本人は、ピロリ菌感染率が高く、実に8割が陽性です。29歳以下の感染率も約3割です。しかし、ピロリ菌が原因で、委縮性胃炎や潰瘍が出てくると、その結果、胃痛が出てくるのです。問題は、胃癌との関係です。10年の追跡調査では、ピロリ菌陽性者の3%が胃癌となり、陰性者からの胃癌発生は、殆どゼロなのです。そこで、ピロリ菌を除菌すれば、胃潰瘍になりにくくなるとともに、胃癌の発生が実に3分の1と激減します。09年、日本ヘリコバクター学会が、胃がん予防のために除菌を勧める指針を出したのです。

 そして質問者の除菌についてですが、今の胃痛の原因がどうあれ、除菌対象ですので、お勧めいたします。マスコミでも大きく報道されましたが、今年の2月から、ピロリ菌陽性の胃炎に対しても、保険で除菌できるようになりました(内視鏡で胃炎確定診断が必要)。ピロリ菌陽性の胃十二指腸潰瘍などに対して(造影検査での診断でも可)は、従来通り保険で除菌できます。かかりつけ医にご相談下さい。