ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

「運動ニューロン症」の疑いと言われました

Q 「「運動ニューロン症」の疑いがあると医師に言われました。具体的な症状と家族がどのように対応したらいいのかアドバイスをお願いします。(70代・男性)」


A 「運動ニューロン症」とは、聞きなれない病名ですよね。医学用語としては、「運動ニューロン病」や「運動ニューロン疾患」との表現も使われますが、同じ病気(群)です。そして、その代表が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)ですので、医師に言われたのは、多分「ALSの疑いがある」との意味かと思われます。ALSは、稀な病気ですが特定疾患(難病)にも指定されており、また患者さんの闘病生活や延命治療などに関して、マスコミでも報道されることがありますので、耳にされているかもしれませんね。以下、ALSについて、説明いたします。

 ALSは、運動神経(大脳からの運動の命令を筋肉まで伝える神経)だけが障害される神経難病です。発症は、50〜60歳代が多く、人口10万人当たり2〜7人です。難病医療を受けている患者数は、平成23年度で8、992人です。

 症状ですが、手足の先の方から段々と力が入らなくなり、筋肉がやせていきます(筋委縮)。そして徐々に全身へと広がり、口やのどの筋肉が障害されると、ロレツが回らなくなり、食事でむせ込み(嚥下障害)、咳が出るようになります。そして、呼吸筋が障害されると、呼吸困難となり、人工呼吸器が必要となる病状経過をたどります。

 家族の対応ですが、まず診断確定が重要で、納得いくまで、専門医の診断を仰ぐことです。私の担当患者さんの場合は、診断確定まで10ケ所位の総合病院や大学病院の診察を受けたそうです。それ程、診断が難しい病気なのです。もし診断が確定したら、おそらく呆然となる患者さんに、今後の人生のベスト(最適な医療と介護)をつくすよう丁寧に励ます事が必要でしょう。そして、関係専門スタッフと緊密に協力して、制度活用や支援体制など本人も含めて、十分に話し合い、方向を確認していきましょう。御自身の命や生き方を見つめなおし、人 生の将来を見通す話し合いを重ねていく必要があると思われます。