ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

避難生活による足のむくみ

Q 「東日本大震災の津波で家が流され、避難所で3か月間、夫婦で布団2枚分が自分のスペースの窮屈な生活をしました。仮設住宅に移ったいま、母のひざ下がむくみ、床に座れない日があります。診療所ではひざに水がたまっていると言われました。避難所生活が原因だったのでしょうか。改善方法はありますか。」 (宮城・O)


A 避難所生活3ケ月、とても大変だったですね。ひざ下に水がたまったとのことですが、避難所生活の間にはなかったようですね。

 「避難生活による足のむくみ」という症状は、マスコミなどで注意が呼び掛けられてきたのが、一番心配されるエコノミークラス症候群との関係です。しかし、その場合は、静脈に血栓がたまり、詰まって、炎症をおこす深部静脈血栓症という病気が引き起こされた結果に足がむくむので、多くはふくらはぎです。従って、膝に水がたまっているとのことですと、別の状態かと思われます。

 では「膝に水がたまる」原因は何なのでしょうか。関節炎(化膿性・リウマチ性)、半月板という軟骨の損傷(外傷性)、関節内に軟骨などの破片がある場合、そして一番多いのが変形性膝関節症です。まずこれらの原因を正しく診断することで、それに応じた治療をお受けになるのが、もっとも有効です。ご質問のお母様の場合は、外傷や化膿などはなさそうですので、変形性膝関節症の悪化が原因と思われます。

 変形性膝関節症とは、加齢や肥満のためなどで、大腿骨と頸骨の先端を覆っている関節軟骨がすり減った状態です。この軟骨は、クッションの役割を果たしているもので、減ってしまえば関節同士の摩擦がおこり、それによって痛みが出てきたり、軟骨がこすれて出来たかけらが関節液の中に入り、水がたまっていくのです。

    治療法ですが、薬物投与、サポーターなど装具装着、リハビリテーションなどがまず行われます。またヒアルロン酸の関節内注入療法生活習慣の改善・適度な運動、食生活の見直し、減量なども有効です。それらで効果が見られない場合は、手術療法も必要になる場合もあります。