ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

大腸菌の食中毒について

Q 「日本では「O−111」、欧州では「O−104」と大腸菌の食中毒が猛威を振るっています。夏の暑い盛りを迎えて、心配です。」 (鳥取・I)


A マスコミで随分報道されましたね。4月の富山県等における焼き肉チェーン店の集団食中毒では、4人が死亡されています。食べた生肉が、病原性大腸菌O-111に汚染されていたためです。また,5月上旬にも山形県内で,だんごが原因とされる病原性大腸菌O157による食中毒が発生しています。さらに,5月下旬には、ドイツでも生野菜が原因と推定される病原性大腸菌O-104による食中毒が大量発生しています。

 このドイツでの食中毒事件は、6月15日現在3351人が発症し、うち821人が重症で溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発し、37人が亡くなっています。隣国でもドイツからの帰国者が発病し、欧州全体の問題です。原因は、有機農場で育てられた新鮮野菜と考えられています。日本では平成8年の岡山・大阪のO-157大量発生事件の時、カイワレ大根が疑われた事を、思い起こさせるものです。

 病原性大腸菌による食中毒は主に、汚染食物を食べて感染します。100種類以上ある中で、腸管出血性でベロ毒素を持つ菌種がO-1、O-18、O-104、O-111、O-157などです。これに感染すると、血便を伴う下痢となり、重症化すると腎不全、貧血、痙攣や意識障害が起こり(HUS)、そして最悪の場合は、死亡してしまうのです。

 予防のポイントですが、

1 食品や食器には、菌をつけないように、十分に洗浄・消毒する。 

2 汚染・感染を防ぐために、トイレ後、調理前、調理中に、しっかりと手洗いすること。 

3 食肉を食べるときは、中心部まで十分に加熱する。75度・1分以上の加熱で菌は死滅します。特に幼児小児や 高齢者などの抵抗力の弱い方は生肉を食べさせないようにしましょう。