ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

A型肝炎といわれました

Q 「観光旅行から帰った後、熱が出て、とてもだるかったので病院を受診したところ、A型肝炎といわれました。旅先では名物の磯料理を多く食べました。原因や症状、治療などについて教えて下さい。 」(神奈川・T)


A  熱が出て、だるいので、風邪かと思っていたらA型肝炎と診断され、驚かれたようですね。

  A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(Hepatitis A virus:HAV)によって起こされる、急性の肝障害で、発熱、全身倦怠、食思不振、など感冒様症状で発病し、黄疸(白眼の部分や体の皮膚が黄色くなる)が出てくれば強く疑われます。しかし、黄疸が出ない場合もあり、また嘔吐・下痢・腹痛などがでて、感染性胃腸炎を疑われることもあります。

  感染経路ですが、糞便中に出たウイルスの経口感染で、糞便に汚染された器具・手指等を経て感染します。特に衛生環境が不良な流行地などで、ウイルスに汚染された水や野菜、魚介類などを生や加熱不十分で、食べることによって感染します。日本では、カキやはまぐり等の二枚貝の加熱不十分な料理が原因になっています。一部ですが性行為による感染の報告もあります。

  HAVは、全世界に分布していますが、感染力が比較的強く、居住環境の衛生状態と患者の発生数とが関連しているようです。上下水道が完備している先進国での発生は少なく、衛生環境が良くない地域で、感染が蔓延し、流行地となっています。発展途上国では10歳までにほぼ100%が感染(大半は無症状)しますが、日本などでは、中年以下の年齢層の多くが未感染です。

  HAVに感染すると、2から7週間の潜伏期ののちに、増殖したウイルスに対する免疫作用でHA抗体が作られ、肝炎症状が出現します。感染者の糞便中には、症状出現以前でもウイルスが排出され、感染源となります。経過は慢性化することなく、発症後1ケ月で治癒します。まれに劇症肝炎が起きると、死亡率が高くなり、A型肝炎全体による致死率は中高年では2%位と言われています。また腎不全が合併することもあり、注意が必要です。

  治療法ですが、特異的な抗ウイルス剤は開発されていませんので、対症療法のみです。重症・劇症化の懸念がある場合は、速やかに専門施設で治療を受ける必要があります。