ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

すい臓がんの原因や予防策など

知人が2人ほどすい臓がんで、発見から半年ほどのうちに亡くなっています。すい臓がんは、自覚症状がないために見つかりにくいと聞いています。原因や予防策などを教えてください。」(千葉・M)

 わが国で毎年ニ万二千人以上の方が亡くなられる膵臓癌は、早期診断と治療が最 も難しい癌の一つです。発見から半年で亡くなられた知人のように、多 くの膵癌 は手遅れの状態で発見され、遠くへ転移した場合の予後(生存期間 )は、四〜六 ケ月でしかないとの実に厳しい状況なのです。手術のできる段 階で発見され、治 癒切除(手術で癌およびリンパ腺が完全に切除)が出来た 場合ですら、約9割が 再発し死亡するという治療成績なのです。
  早期発見が難しい理由は、膵臓がとても見つけにくい場所にあることと、癌にな っても症状が出にくいからです。膵臓は、体のまん中にあり、胃・腸・肝・胆など に囲まれ、内視鏡や造影X線検査ができず、早期発見につながる腹部エコーでも、 全部は映し出せない内臓なのです。症状は、最も多いのが胃部や背中の重苦しさ、 お腹の調子が悪い、食欲がないなど漠然としたものです。他に体重減少、黄疸、体 がかゆい、尿の色が濃い、糖尿病の血糖コントロールが急に悪化したなど、どれも 膵癌に特有なものではありません。
  原因ですが、余り解っていないのが現状で、はっきりしているのは多くの癌の原 因でもあるタバコだけです。食事では、高脂肪・肉摂取がリスクを増加させ、また 野菜・果物がリスクを低下させる可能性が示され、その他糖尿病や飲酒に伴う慢性 膵炎によってリスクが上がるという報告もありますが、確定的な原因は不明だとい わざるを得ません。
  予防策も、残念ながら確定的なものはありません。一般的な「がんを防ぐための 12ヵ条」(ガンセンター推奨)が参考になり、積極的に実行すれば癌全般の約6 0%(禁煙で30%、食生活の工夫などでさらに30%)が防げるだろうといわれ ています。 

   どうも新年早々、暗いお話しばかりですみません。