ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

特定健診について

特定健診が始まり、肥満への関心が高まっています。やせているより、ちょっと太っていた方が長生きするとの意見もあるようですし、肥満対策だけでは不十分とも聞きます。体重や体形が健康とどうかかわるのか。注意することを含めてアドバイスをお願います。」(神奈川・G)

A 特定健診(通称メタボリック健診)が始まっていますが、これは、4月のこのコーナーでも書きましたが、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した生活習慣病予防を主目的にしたものです。肥満などを原因とする生活習慣病は、医療費の3割を占め、死因別死亡率の6割が生活習慣病によるもので、対策強化は確かに必要です。つまり、肥満と体形(腹囲周りの測定)で内臓脂肪肥満を判定し、糖尿病、高血圧、高脂血症の危険因子が重なるほど動脈硬化をすすめて、心疾患や脳血管疾患を発症しやすくなるのです。
 ところが今回の特定検診の問題点としては、@新しく採用された内蔵脂肪肥満の基準(腹囲)が、国際基準と異なり、女性が男性よりも大きい基準である点、A今まであった、腎臓病関連の、血尿検査と、血液検査でのクレアチニンが除外され、慢性腎臓病の評価としては十分ではないこと、B生活習慣病だけでなく、全ての疾患を含めての寿命調査では、少しメタボの方が長寿の傾向にあり、しかも痩せ過ぎになると死亡率が高まることが無視されていること、などです。
 体重や体形と健康の関係としては、メタボが強まれば、動脈硬化性疾患を進行させる問題とともに、反対に痩せすぎると、脳出血の傾向や、癌発症率の高まりなど、健康への悪影響も出かねません。
 つまり、体重は標準ないし軽度メタボを目標にして、肥満対策をとるとともに、大事なことは適度な全身運動を心がけて、身体に筋肉をつけることです。やみくもに食事を減らして痩せればより健康だとは決して言えないのです。