ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

ピック病とはどんな病気ですか

新聞でピック病という病気があることを知りました。聞きなれない病名でどんな病気なのでしょうか」(北海道・T) 

A 「ピック病」にかかっていた公務員らが、その診断前に、症状の一つである万引きをして社会的地位を失うケースが相次いでいるとの新聞報道がありました。余り知られていない病気ですが、ピック病に罹ると、脳の前頭葉が萎縮(いしゅく)して、感情の抑制がきなくなり、反社会的事件につながることがあり、しかも犯行時の記憶がないのが特徴の一つで、厚生労働省の若年認知症研究班が、実態調査に乗り出しています。
 ピック病は、若年性認知症の一つで、頻度はアルツハイマー病に比べて3分の1から10分の1と少ない、原因不明の大脳萎縮性疾患です。特徴的なのは、脳の前頭葉・側頭葉が萎縮し血流低下になることで、「前頭側頭型」認知症の一種とも言われており、その8割を「ピック病」が占めています。発症年齢としては、40代〜50代の働き盛りの年代にピークがあり、平均発症年齢が49歳と、アルツハイマー病の平均発症年齢に比べ若干若いのが特徴です。男女比は、女性にやや多いアルツハイマー病と比べて、ピック病に性差はありません。
 ピック病の症状ですが、人格障害が目立ち、怒りっぽくなるとか、人を無視した態度などの性格変化や、浪費、過食・異食、窃盗、他人の家に勝手に上がる、同じ言葉を繰り返すなどの日常生活での行動異常が特徴的です。アルツハイマー病の場合は、記銘力・記憶力低下などの知的機能低下が初発症状に表れますが、ピック病の場合の初期は、記憶・見当識・計算力は保たれています。
 しかし病気の
進行と伴に次第に記憶障害などの知的機能低下がおきて、最終的には重度の知的障害に陥ります。CT・MRI検査で、側頭葉・前頭葉の脳萎縮を認めれば、特徴的な症状とあわせて診断がつきます。