ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

朝青龍の『急性ストレス障害』

「朝青龍が『急性ストレス障害』と診断されたと報じられています。精神的にも強そうに見えるだけに意外な感じがしますし、人はそんなに簡単に心身症なるものかと思ったりもします。『急性ストレス障害』について教えて下さい」(長野・S)


A 朝青龍が、日本相撲協会から処分を受け、謹慎中に精神疾患に陥って急性ストレス障害と診断され、その後解離性障害として受診していると、マスコミをにぎわせている件ですね。これは、精神疾患疑いの患者さんが、過剰なマスコミ報道合戦にさらされるという、現代日本社会の異常さを感じさせる事件でもあり、又、疾患の性格上、必ずしも診断が確定していないのではと思われますが・・。
 ご質問の、急性ストレス障害ですが、よくマスコミでも取り上げられる外傷後ストレス障害(PTSD)とを総称して「ストレス障害」と言われる精神疾患の一つです。それは、災害や、悲惨な事件などの苦痛な出来事の体験や持続する不快な境遇による衝撃(トラウマ体験)によって引きおこされた病的状態です。そしてそれが2日から4週間まで続く状態を急性ストレス障害とし、1ケ月以上持続するものを外傷後ストレス障害と分類されているのです。
 症状は、苦痛な出来事の体験中、又はその後に、次の5症状の3つ(又はそれ以上)が出てくることです。@感覚の麻痺、外界との分離感、感情的な反応が無くなる、A周囲への注意力の低下(ぼんやりしている)、B現実感の消失(ものごとが現実ではないという感覚)、C離人症(自分自身が現実ではないという感覚)、D解離性健忘(トラウマ体験の核心部分の記憶喪失)です。
 また、@フラッシュバック:その時のトラウマが繰り返し思い出されたり、悪夢を見たりする、A回避:トラウマに関する出来事や、関連する事柄を避けようとする傾向、B過覚醒:神経が高ぶった状態が続き、不眠や不安に陥る、などが強く現れます。
 ストレス障害の治療としては、心理療法と薬物療法があります。外傷体験には強い不安を伴っていることが多く、支持的な心理療法が重要で、また抗うつ薬が必要に応じて使用されます。