A 胃潰瘍は、胃酸の影響によって、胃の壁(粘膜)に一定の深さのえぐれたような傷が出来る病気で、みぞおちの痛み(臍の上の方の痛み)が、夜間や空腹時に出てくることが特徴的です。
しかし、腹痛が出てこない潰瘍も、実は20−30%位あると言われています。そして、もし未治療のままで、原因となるストレス・喫煙・鎮痛剤内服などが続きますと、潰瘍の傷が、さらに深く進行し、胃壁を貫き、とうとう穴が開いてしまう(穿孔)ことになります。そうなると、胃の中の胃液や食べ物が腹腔内にあふれ出し、危険な腹膜炎がひきおこされ、突然の激い痛みが出て、お腹が板のように硬くなってしまいます。この時は、入院が必要になり、しばしば緊急手術が行われる事になります。
胃潰瘍の治療ですが、まず酸分泌抑制薬の内服(初期治療)が開始されますが、それで多くは腹痛が治まってきます。同時に必ずピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)を検査して、陽性(菌がいる)と判れば、早期に除菌療法を行う必要があります。プロトンポンプ阻害薬(PPI)と言う酸分泌抑制薬と抗生物質2種類(ペニシリン系とマクロライド系)を1週間内服する事で、90%が除菌されるのです。
一方、ピロリ菌検査が陰性(菌がいない)の場合は、初期治療を継続し、症状の改善具合が不十分な場合は、酸分泌抑制薬を2種類かさねたり、胃粘膜保護剤を使ったりして潰瘍を完治させます(内視鏡確認が確実)。その後、維持療法として、初期治療の半分を寝る前に、一定期間飲むことが必要です。
胃潰瘍の予防ですが、ピロリ菌保持者の場合は、除菌が最大の予防策で、除菌できれば9割の再発が予防できるとの統計がでています。ピロリ菌非保持者の場合は、原因となるストレスの予防、喫煙・飲酒・鎮痛剤などの中止が必要です。
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