ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

「生活習慣病対策の『ニート』とは?」

Q「生活習慣病対策に『ニート』という言葉が注目されていると聞 きました。「ニート」とはどのようなことでしょうか」(大阪・F)  

A 最近、ある新聞で「もう一つのニート」という報道がされました。 すっかり有名になったニート(NEET)とは、ご承知のように、 通学も働いてもいない若者のことを指していますが、こちらのニート (略字のNEATは一字違い)は、”日常生活の中での活動による エネルギー消費”として生活習慣病対策に効果的と注目され始めています。
 NEATは、Nonexercise activity thermogenesisの略で,直 訳すれば「非運動性活動熱発生」となります。つまり,運動ではな い活動で消費され発生する熱量を指します。人間は、様々な身体活 動にエネルギーを消費するわけですが、大別すれば「日常生活での 活動」と、体力の維持や向上のための「運動」とに分けられます。  ニートを増やす「立つこと」の重要性について、米国研究グルー プが昨年発表したのが、やせ気味の人と肥満気味の人の行動の比較 研究です。そこでは、肥満気味の人はやせ気味の人よりも1日平均 で約2.5時間座っている時間が長く、歩行時間 が少ない傾向があることが分かったのです。立っている時間を1日 に2.5時間増やすだけで、約350キロカロリーのエネルギーを 余分に消費した計算になるのです。
 生活習慣病対策としては、食事の注意(摂取カロリーの制限)と 適度な運動(エネルギー消費量を増やすこと)が重要ですが、運動を してこなかった人には、運動を急に始めるのは中々難しいという現 実があると思われます。そこで、家事、通勤・通学、趣味などの「 日常生活での活動」で、エネルギー消費量を増やすことができる と言うのは朗報でもあると言えます。
 では、ニートを増やす(消費エネルギーをふやす)生活での活動 とは、立って家事をする 立って庭仕事をする、テレビを立っ たまま見る、子供と遊ぶ、通勤等で意識的に歩く、会社でエレベー ターなど使わず。正しい姿勢で立つ,階段を使う,じっと立ったままで テレビを見る,本を読む,電車の中で座らずに立つなどがある.確かに日常生活の 中でちょっと心がければできることです.  注意しなければならないのは、ニートは食事療法との組合せで、効果が出てくると いうことだ。頑張って日常での活動を増やしても、食事療法がおろそかになると、 十分な効果が得られなくなってしまう。