ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

「漢方薬についての基本的知識」

Q「漢方薬についてお尋ねします。イライラ気分がとれず、 快眠できないと病院で話したところ、漢方薬が処方されました。 服用してもなかなか効き目が感じられません。漢方薬は効かない という声も聞きますが、漢方薬についての基本的知識を教えて下さい。 また、保険が適用される漢方薬とそうでないものの区別があるのでしょうか」    (福岡・W)

A イライラ気分と不眠状態に、病院で漢方が処方されたが、 なかなか効き目が感じられないとのことですね。まず不眠症に 対する漢方治療ですが、神経症性不眠や神経質性不眠、睡眠薬の 副作用が出ている場合などに良い適応があります。しかし、漢方薬が 不眠症に効果をあらわすには、多くは一定の時間がかかるものです。 睡眠薬・精神安定剤・向精神薬のように、飲めば効果がすぐ出る精神・ 神経関係の漢方薬がないからです。実際、不眠や神経症に対する漢方薬の 効き目は、2から4週間はみないと判断できないと言われています。 従って、早急に改善を必要とする不眠・イライラには、西洋薬( 漢方薬でない一般処方)が第一選択になります。このような事から、 漢方薬は効かないとの声が出るのかもしれませんが、西洋薬で治療に 難渋していたり、やたらと薬の種類が増えたりする病状に対して、 必要な漢方的診察により、適切な漢方薬が選択されれば、著効したり、 すぐ効く例も少なくありません。現実に漢方薬だけですべての疾患を治 療している漢方専門医もおられます。  
 さて漢方薬の基本的知識ですが、その基礎になる漢方医学は、 中国の伝統的医学を起源として江戸中期の変革をへて、昭和期以後は、 西洋医学の影響も受けて、日本の伝統医学に発展したものです。その特徴は、 個々の病人に最適の漢方薬処方を選択する目的を中心にした医学で 、全身をみる、心身全体の調和をはかる、患者さんの個体差を尊重した医学です。 漢方薬は、植物・動物・鉱物からなる生薬の組み合わせであり、現代では、 エキス化されて、殆んどが保険適応されています。ただ漢方専門医の中には  生薬をご自分で組み合わせている場合、保険が効かない場合もあるようです。