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「アルコール依存症は、脳の病気なのでしょうか?」
Q「うつ病をはじめ精神疾患が増えていますが、友人にもアルコール依存症と診断された人がいます。うつ病は心の病気ではなく、脳の病気と言われていますが、アルコール依存症も同様に脳の病気なのでしょうか?」(北海道・K)
A まず、「アルコール依存症」という病気について、説明しましょう。アルコール依存症とは、長期間にわたる大量飲酒により、飲酒の習慣性が生じてしまい、コントロ−ルのきかない飲み方となり、その結果、ついには心身の障害や社会問題が出現してしまった状態です(飲酒のコントロール障害)。その中に、脳の病気である様々な精神神経症状(うつ状態・幻覚・妄想・てんかん発作・記憶障害・小脳障害など)が出てきます。そして又、アルコールが切れてくると、離脱症状(禁断症状)という精神神経症状(不安・抑うつ・動悸・発汗・振るえ・幻覚・痙攣発作など)も出てきてしまいます。
このように、アルコール依存症の原因は、「長期大量飲酒」という生活習慣にあります。脳の中の病気が原因となるのではなく、結果として、様々な精神神経症状がでてくるのです。依存症になりやすい遺伝的原因があるとの仮説がありますが、どの遺伝子が関与しているかの特定は、未だできていません。
では、この飲酒習慣(長期大量飲酒)に陥る原因についてですが、多様で複合的な要因が絡んでいます。例えば、仕事、対人関係、家族問題、うつ状態、中年の生き甲斐の喪失、自分中心の性格要因など、生まれてから今にいたるまでの家庭環境や人間関係、さらに種々の事件や喪失体験など、あらゆる要因が絡んでいます。過去のとてもつらい体験が癒されずにいることも、影響がありえます。
アルコール依存症の患者さんは、飲酒によって、様々な精神的・身体的障害が、起きていることを十分に承知しています。いけない事と自覚していながら、飲み続けてしまう生活習慣病なのであり、唯一の治療法は、飲酒習慣を断ち切ること=断酒です。そして断酒するためには、薬物治療(抗酒剤)の効果は、部分的で一時的なものであり、精神療法・集団療法・家族療法などが重要で、断酒会や自助グル−プへの参加が進められています。
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