ドクターおおばの
医療相談
院長 大場 敏明
痴呆に漢方薬が効くと聞きましたが?
Q:「痴呆に漢方薬の八味地黄丸が効くと聴いたことがあります。随分、研究がすすんでいるようですが、どういう成果が現れているのでしょうか。また、発症そのものを抑えることはできないのでしょうか」(静岡・F男)
A:わが国の痴呆性老人は、平成12年時点で約150万人と言われ、65歳以上の高齢者の約1割が、痴呆症を有すると推定されているので、数年後には200万人を超えると予想されています。痴呆症の原因は、血管性痴呆とアルツハイマー病が各々4割ずつです。
アルツハイマー病の遺伝的危険因子や、食事・栄養との関係、ワクチン療法や薬物療法など、研究が日々進歩していますが、根本的な原因に関しては、未だもって、解明しきれてはいません。そして、予防法・治療法についても、根治的効果が確実なものは開発されていません。つまり、ご質問の「発症そのものを抑えること」は、現時点ではアルツハイマー病に関しては、残念ながら未だできないと、言わざるをえません。
一方、脳血管障害に関連して出現する血管性痴呆を発症しないようにするには、危険因子の除去と予防が、重要です。つまり、高血圧・糖尿病・高脂血症・心臓病などの危険因子を、適切に管理して、脳血管障害を予防することが重要なのです。
ご質問のように、漢方療法の研究もすすんできています。しかし、「発症予防」につながる研究成果は、未だあがっていません。
ご質問の「八味地黄丸」は、ごく最近の研究成果として注目されているもので、血管性およびアルツハイーの混合型に効果があり、患者さんの認知能力と、日
常生活動作を改善することが明らかとなりました。
従来、漢方治療としては、「藤釣散」に血管性痴呆の周辺症状(感情の変動・昼夜逆転)と、認知機能の改善傾向が認められていました。そして、「加味温胆湯」と言う漢方(保険では使われていない)が、アルツハイマー病で、認知機能の改善をもたらす事が、科学的な根拠をもって証明されています。このように症状を改善する治療法として、漢方の有効性が注目されてきているのです。