ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

痩せと胃下垂は関係あるのでしょうか?

Q「友人に胃下垂の人がいます。よく食べるのですが、ぜんぜん太りません。胃下垂の人はよく太らないといいますが、痩せと胃下垂はなにか関係あるのでしょうか。」 (福岡・K子)

A「痩せと胃下垂」との関係についてのご質問ですが、まず胃下垂についてご説明いたします。
 胃下垂とは、胃の位置が通常より下のほうにある(下に垂れている)状態を指す言葉で、病名ではありません。例えば、四角い顔とか、短足とかが、病名ではないのと同様です。
 確かに、胃下垂の方は、細く痩せた体質である場合が少なくありません。痩せた方は、腹部の脂肪と筋肉が薄く、腹部の圧力が低いために、胃が下がる原因になっていることは事実であると考えられます。
 一方、不快な胃症状があり、X線検査が胃下垂なので、「胃下垂症」と診断される場合は、病名と言えます。しかし、その本態は、胃が下がっている事にあるのではなく、胃の働きが弱い=「胃弱」にあります。画像診断では明らかな疾患がないのに消化不良、食欲低下、嘔気、胃痛などの苦痛のある症状が続く消化機能障害に、最近はジスペプシアという病名がつけられています。以前はよくこの「胃下垂症」との診断がつけられていたものです。
 一部に”胃下垂の方は、太らなくてうらやましい”と、思われるむきもあります。しかし、胃下垂状態にある方の中には、胃の不快な症状があり、太れなくて悩まれている方もおられます。この場合も、太れないのは、胃下垂のためではなく、胃弱のためになのです。
 そもそも人間の体重が増減(太ったり・痩せたり)するのは、カロリーの吸収と消費のバランスによるものであって、胃の位置とは関係ないと言えます。
 現在は飽食の時代ですので、水を飲んでも太ってしまうとか、肥満の悩みが多いわけです。しかし一方、痩せすぎで悩んでいる方もおられます。また、神経性食思不振症などの摂食障害も、現代病と言えます。
 適正な体重にある方は、根本的には、吸収カロリーと消費カロリ−とのバランスが取れている方で、学ぶところがあると思われます。