ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

「夫が自然気胸と診断」

Q 「夫が自然気胸と診断されました。大きな気泡(のう胞)があるということです。どんな病気でなにが原因なんでしょうか。(埼玉・女性)」


A 「気胸」とは、空気(気)が、胸腔内(胸)に貯まった状態を言います。通常は胸腔内には空気は存在しません。ところが、気胸では、肺の一部が破れて穴ができて、肺内部から外側の胸腔内に空気が漏れ出てくるのです。この空気により肺がつぶれてしまいます。
 気胸には大きく分けて2つの種類があります。自然気胸と続発性気胸です。このうち自然気胸の原因としては、肺の表面にブラやブレブという風船状の袋のような肺嚢胞(のうほう)ができて、それ が破れることがもっとも多いようです。
 自然気胸は20歳代前後がピークで、高齢の方にもみられます。これに対して、続発性気胸はさまざまな肺疾患に続いておこってくる気胸をいいます。高齢者では、肺気腫、肺結核、種々の肺炎、まれには肺がんも原因となる場合もあります。
 症状としては突然起こる胸痛です。咳が急に出始めたり、呼吸が苦しくなることもよく起こる症状です。
 空気が肺だけでなく心臓を圧迫すると血圧が下がってショックとなります。これを緊張性気胸と言いますが、強い呼吸困難や血圧低下が生じ、すぐに処置をしないと危険です。もう一つ危険なことは、肺が破れてしぼむときに癒着がはがれて大出血を起こすことです。 この場合も血圧が下がってショックになることがあります。
 治療は、空気のもれが軽度で症状が軽ければ、安静だけで空気は自然に吸収されます。肺がつぶれて小さくなった時は、胸腔ドレーンと呼ばれる管を胸に刺します。胸腔内にたまった空気を排除し、肺が膨らむようにするためです。
 しかし、空気の漏れが続いたり、再発(3回以上)を繰り返すときには手術が必要です。手術は原因となった肺嚢胞の切除を行います。手術の痛みを軽減し、傷を小さくするために、現在では多くが胸腔鏡(きょうくうきょう)で手術が行われています。