ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

高HDL血症について  2002.9.

Q:健康診断の結果でHDLが基準値より高くなっていました。「HDLは善玉コレステロール」と聞いていますが、沢山あればあるほどいいのでしょうか。また、一般のコレステロールとは、どうちがうのでしょうか。  43歳 女性


A:健診で高かったHDLについての質問ですね。HDL(HDLコレステロールの略)は、血管などに過剰に蓄積したコレステロールを取り去り、肝臓に運び、処理する働きを持ったもので、「血管のお掃除屋さん」とも言われる”善玉コレステロール”です。つまり血管の動脈硬化症が進むことを抑制する作用があり、血液検査値で40から60mg/dlが正常ですが、それ以下に低下(低HDL血症)すると動脈硬化が進んでしまいます。つまり狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患が起きやすくなるので、治療が必要になってきます。
 一方、”一般のコレステロール”である、LDLコレステロールは、総コレステロールの中の多くを占めていますが、末梢組織にコレステロールを運搬する役割、つまりHDLと逆の作用をもったものです。従って、LDLが高く(高LDL血症)なると、血管内にコレステロールが進入しやすくなり、動脈硬化を進めることになり、低HDL血症と同様に、虚血性心疾患の危険性が高まるので、”悪玉コレステロール”と言われている訳です。
 さて善玉のHDLが、高いほど良いのかとの質問ですが,高HDL血症という場合は、100mg/dl以上を指し、わが国でも1000人に1人位は存在すると言われています。今までは、HDLが上昇する原因として、アルコールの多飲や種々の薬剤投与(ステロイドホルモン、インスリンなど)ある種の肝硬変症などが知られていました。 そして、最近の研究結果では、遺伝的な酵素異常によることが多いようで、冠動脈疾患保有率が高いという報告も見られております。今後この状態に動脈硬化を伴いやすいことが明らかになる可能性があり、高ければ良い訳ではなく、高すぎると問題がありますが、高HDL血症のはっきりとした治療方針
(ガイドライン)もありませんので主治医の判断にまかされている状況です。
 私見ですが、高HDL血症でもLDLが高ければその治療が必要でしょうし、LDLがさほど高くなければ、年に1回以上の血液検査での経過観察でよいと思われます。