ドクターおおばの
医療相談
院長  大場 敏明

2002/4  「野良猫に手をかまれ、はれあがりました」

Q 先日、野良猫に手をかまれ、はれあがり,病院で抗生物質の薬を処方されました。犬の病気はよくきくのですが、猫も同じようなのでしょうか。(男 56才) 

A 猫にかまれて腫れあがったとのことですが、犬や猫に咬まれて 感染症を起こすことは決して珍しくはありません。この咬傷(咬まれた傷)感染症は、刺し傷自体は一見小さくても、以外と深い傷になっていることが少なくありません。犬・猫の歯や爪についた細菌が、皮内に刺し入れられて、化膿して腫れあがります。
 統計によると、犬に咬まれて感染症が起きる率は10数%ですが、猫だと30−80%と、危険性がより高いようです。咬傷感染症を起こすのは、パスツレラ菌という菌が一番多く、ブドウ球菌や溶連菌の場合もあります。従って、この感染症を防ぐには、咬まれた時に、傷口は小さくても、傷の中は細菌が多く汚いので、十分な消毒とともに、抗生物質治療を行う必要があります。
 咬傷感染症に似た病気で「ネコ引っ掻き病」という分かりやすい名前の病気があります。これは文字どうり”猫に引っ掻かれたり、咬まれたりした為に起きる病気”です。創部の皮膚が赤くなって膨れるだけでなく、近くのリンパ腺が腫れたり、発熱・全身のだるさ・頭痛・関節痛などが起きてきます。バルトネラ菌という菌によって起こされるもので、やはり抗生物質で治療します。まれですが、創部発赤やリンパ節腫脹が目立たずに、脳症や肝脾腫、視神経網膜炎などの合併症が出る「ネコ引っ掻き病」もあります。
 なお、犬に咬まれて起きる有名な「狂犬病」は、日本では40年以上も発症していない病気ですが、世界では毎年数十万人が死亡しています。アジア・アフリカでは多く見られるので、海外で犬に咬まれた場合にはワクチン投与が必要です。